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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第6章 なか


「失礼します」

アイリーンは足を組んで書斎の椅子に座り、くるくると受話器のコードをひねっていた。
さっきの電話以来、なぜか下手にセバスチャンを意識してしまい目が合わせそうにない。
セバスチャンはアイリーンの五歩手前で足をとめる。

「なにか御用でしょうか?」

いつもの声のはずなのに、好きな人の声だと思うと心が高らかにベルを鳴らしている。

「あっ、明日、シェリーがくるの」

「シェリー様ですか、また急ですね」

「さっき電話してたら明日行くって言ってたから。ちゃんともてなし出来るわよね?」

「イエスマイロード」

セバスチャンが綺麗なお辞儀をする。アイリーンはやっと静まった心のベルにほっと胸を撫で下ろす。さっきの緊張はなかったことにしよう。

「時にお嬢様」

コツコツと踵を鳴らしてセバスチャンがアイリーンの横に立つとぐいっと顔を覗き込む。
綺麗な顔立ちの顔が近づいてきて思わずドキドキしてしまい、後ろにへと後ずさろうとするがセバスチャンが腕を回して背もたれを抑えているせいで後ろに進めない。

「なっなに」

「私と全く目が合わないのですが…なにか私と目を合わせたくない理由でも?」
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