第5章 番外編 ー執事が考える罰ゲームー
私はどんどん自分がなにをしているのかが分からなくなってきた。
あのあと、姿を消したセバスチャンはすぐに戻ってきたと思えば大きな肉球の手袋を私にはめた。
「嗚呼…なんと美しい毛並みにふっくらとした肉球…強気な眼光の奥には幼さも秘めている…これほどまでに私を魅了する猫は他におりません」
「あ、いや…私なんだけど」
手袋の肉球をただひたすらプニプニしているセバスチャンの目には私は猫としてしか映っていないのだろうか。
そう考えると胸の奥にチクリとした痛みがはしった。
「猫は人の言葉は喋りませんよ?」
ニヤリと口の端をあげて笑う。
こいつ、腹立つ〜〜!!!
「では今日1日だけ、こう致しましょうか」
セバスチャンが指をパチンと鳴らす。しかしなにも変化が起こらない。
「にゃー」
私、いま…にゃーって言った?
すると耳にセバスチャンの抑えた笑い声が聞こえて私は怒りたくなった。
「にゃっ!にゃにゃにゃ〜!」
でも私の言葉は全部猫の鳴き声に変えられてセバスチャンにはなにも伝わらない。
私はセバスチャンに近づいて肉球でセバスチャンを叩くが至福と言いたげなセバスチャンにはほぼ効果はなかった。
「ふふ、可愛いお嬢様。今日だけは私の猫ですので、猫らしくお願いしますね」
セバスチャンは私の手首を掴むとすっと体を持ち上げ、抱きかかえると私の部屋のドアノブをひねった。
最悪だ。
このままではセバスチャンの思う壺になってしまう。
なんとか抵抗しようと足をバタつかせるがそのたびにセバスチャンが私の顎の辺りをくすぐるものだから私はゴロゴロと鳴いて気持ちよくなり抵抗する気がなくなってしまう。