第4章 いつでも
静かになった部屋。
扉の側の2つの亡骸は何もしゃべることはなく、ただ横たわっているマネキンのようだった。
セバスチャンはアイリーンに絡みついた鎖をはずす。
一気に解放されたアイリーンは体が言うことを聞かず、前向きに倒れセバスチャンが正面から抱きかかえる。
「お顔が赤いですね、なにか飲まされたのですか?」
肩で荒く息をしながらアイリーンは何度も頷く。まだ甘い感覚は抜け切らない。
「び…やく…と…しびれる…や…つ…」
セバスチャンが体制を整えるためにアイリーンの肩に触れる。
「やあっ!」
びくんと体が跳ね、甘い衝撃に耐えられなくなる。
今すぐにでもアイリーンの中に渦巻く甘いなにかに触れてほしかった。このままぐずぐずに得体のしれないものに取り込まれてしまうのなら自分の知っている手で溺れたい。
「セバスチャン…助けて…」
掠れた声がセバスチャンの耳にとまる。セバスチャンはアイリーンの潤んだ瞳を見てアイリーンを壁際で下ろすと壁に手をついた。
「どうして欲しいんです?」
セバスチャンが手をアイリーンの足に這わせる。くすぐったい感覚が頭を揺らす。
肩を小さく震わせたアイリーンはセバスチャンの肩を掴むと自分の顔に近づかせて唇を貪る。
熱い自分の唇と少し冷えたセバスチャンの唇。
熱をうつすかのように唇を重ね合わせてアイリーンは離す。
「っ!」
少し媚薬の効果が薄まったかと思いきや、媚薬の効果に押されていた痺れる香の効果が現れ、アイリーンは苦しげに瞼を閉じてしまった。
そして足に力が入らなくなったアイリーンは壁つたいに倒れる。
「…なんて弱いのでしょう」
セバスチャンはそんな主人を抱きかかえ、割った窓ガラスから出ていった。