第4章 いつでも
刹那、アイリーンの後ろの香が倒れ、床に粉末を散らす。黒いカーテンが開けられると美しいステンドガラスが割れて黒い影が入ってくる。
色々な色のガラスを浴びながら燕尾服の似合う男が部屋に侵入してきた。
コツコツとかかとを鳴らしてアイリーンの斜め後ろに立つと丁寧に腰をおりお辞儀をする。
「お迎えにあがりました、リュシアンナ家執事、セバスチャン・ミカエリスでございます」
セバスチャンが顔をあげると赤い瞳がぼんやりと浮かびあがった。
「はあ?なんであんたここに来れるわけ?!屋敷には100人の警備をつけてるはずなのに」
ミアがよろよろとよろめき、後ろに倒れかけ、男がそれを受け止める。
「ああ、あの方達ならよほど地面がお好きなようですね」
顎に指をあててくすくすと笑う。チラリと牙が見え、まるで飢えた獣のようだ。
アイリーンは今にも漏れそうな嬌声を飲み込み、口をあける。
「もう話は済んだかしら?セバスチャン、早く殺して」
「御意」
セバスチャンは指と指の間に銀食器を挟む。そして銃で牽制しようとする後ろの男を見て微笑んだ。
「姉さんは逃げてください、ここは俺が」
「え、ええ」
「逃がしませんよ」
ナイフがミアの出ようとしている扉に3つ刺さる。
ミアは凄まじい形相でセバスチャンを睨みつけると男を押しのけて銃をセバスチャンにむかって突き出した。
「そういう強引な男、私嫌いなの」
一発、二発。セバスチャンの眉間に確実にあてる。
人間なら即死だ。
人間なら