第4章 いつでも
アイリーンは重たい瞼を開ける。
目に飛び込んできたオレンジの優しい光さえ眩しいと感じて眉をしかめると後頭部に激痛がはしった。
手を動かそうにも鎖が擦り合う音しかしない。どうやら後ろでに縛られているようだ。
鼻に絡みつく甘い匂いが漂う部屋にいるのはアイリーンだけだ。
黒いカーテンが扉の前に垂れており、部屋の隅々にあるオレンジ色のランプが怪しげにゆらめく。
すると扉が開き、大胆に胸の開いた瞳の色と同じ青のスパンコールのスリットの入ったドレスを着ている金髪の美女が入ってくる。
その後ろからもう1人背格好の良い男が入って鍵を閉める。
「…相変わらず綺麗な髪をしているわね。ミア」
「うふ、私、あなたのその瞳好きよ」
ミアは女神のような笑顔を見せて髪を耳にかける。
「お茶会に呼ぶつもりならこんな真似はしなくていいんじゃないの?」
強気な目つきでアイリーンはミアとその後ろにいる男を睨みつける。じっとりと額の縁が汗ばんでいるような気がする。
ミアは軽いため息をつくと首を横に振る。
「そうね、でも今日は違うの」
スリットの隙間からガーターベルトでとめられた銃をアイリーンの顔に向ける。
「ねえ、1つ無理なお願いしてもいい?」
いつも向けられていた無邪気な笑顔。一点の曇りもないまっすぐな碧海の色の瞳は確かにただ1つの目的に対してまっすぐに向けられていた。
「死んで」
人間はこれほどまでに残酷な表情を作ることが出来る。