第4章 いつでも
ダンス会場ではたくさんの男女が中央の広場でくるくると目まぐるしく踊っている。
壁際では男女が飲み物片手に楽しげに話し込んでいた。
ショーをやっているホールよりも人の数は少なく、今の目玉はショーなのだろう。
アイリーンは辺りをキョロキョロしながらキール社の社長、ジョンを探す。
キール社とは動物の毛皮をカーペットなどに加工し世界に展開している企業である。しかしジョンには少し悪い噂があった。
「動物を外国から違法に輸入してるって噂は劉から何度か聞いたことがあるわ。犬を攫う理由がそこにあるのかは分からないけれど」
「あ、あの方ですね。ジョン社長」
ジョンは綺麗に半分で分けられた長い茶色の前髪、ぱっちり開いた緑の瞳と髪の色と合わせたスーツを着た青年だった。
清潔そうな見た目とは裏腹に周りにはたくさんの女性が寄ってたかっており、お気に入りらしき女性の腰に手を回している。
ジョンが近くに立っているテーブルには空になったシャンパングラスがたくさん置いてある。
「…良い青年に見えるのに、あの慣れてる感じは相当遊んでるわね」
アイリーンは隣に通りかかったウェイターからシャンパンをとり、後ろ髪をサッと整える。
「何かあればすぐにお呼びくださいね」
ニコっと笑うセバスチャンにアイリーンは今すぐにでも殴りたい気分になったがぐっとこらえて頷いた。
「女性にばっかり囲まれてニヤニヤしてるあなたを見てるよりはマシだわ」
そう言い放つとアイリーンは踵を返した。