第4章 いつでも
女王陛下は穏やかな笑みをその場に残してアイリーンを後にした。
「陛下をだいぶ待たせてしまったようだわ。今日中に片付けるわよ」
「イエスマイレディ」
派手な照明がつく音が5回する。まっすぐな光の棒がステージに立っている女性を照らしていた。オレンジのストレートロングドレスにさらりと流れる髪をした女性は片手にマイクを持って衆目の目を集めていた。
「みなさん、お待たせしました!今から動物たちによるステキなショーの始まりです!」
女性の掛け声で3匹の白いヨークシャーテリアが現れ、ステージ中心にちょこんとおすわりをする。
そのあとに現れた飼育員と思われるピエロが笛を鋭く吹くと赤と黄色の首輪の2匹のヨークシャーテリアが伏せをし、青色の首輪をしている1匹がその上をジャンプした。
観衆が拍手をすると今度はピエロが赤、青、黄色のカラーボールを持ち、3匹にむかって投げる。3匹は口で自分の首輪の色のカラーボールをキャッチする。
少し伸びた爪がステージをかしゃかしゃかしゃかしゃと鳴らす。
「それにしても美しい毛並みですね、流石は英国王室」
「あの犬はさらわれた犬ではなさそうね」
次々と繰り広げられるショーに人々は拍手をし、パーティは大いに盛り上がった。アイリーンはこの調子で夜まで待たないといけないのかとほとほと呆れて壁際のソファにセバスチャンと座っていた。
「ところで社長は?」
「まだお目見えになっていませんね。ダンス会場に行ってみますか?」
「…そうね」
セバスチャンが開けた腕の空間にアイリーンが腕を通し、笑顔で会話しながら会場を歩く。誰もが犬たちのショーに夢中だ。
ドアを開けるとピアノと見事な吹奏楽が美しいメヌエットを奏でていた。