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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第4章 いつでも


「ふん、ほんのちょっと目を離しただけであんなに声をかけられるなんてね」

アイリーンはフォークにイチゴをさすと口に放り込む。

「余程魅力的に映ったようですね」

セバスチャンはいたずら気にアイリーンを見下ろすと手からフォークを奪う。
そしてケーキを少し切り取るとフォークにさす。

「はい、あーん」

「えっなによ。自分で食べられるわ」

「恋人ですので」

「…チッ」

小さく口を開けるとセバスチャンが口にケーキを入れてくる。指が唇に触れる寸前まで近付いてきてバクバクと心臓が波打つ。

「美味しいですか?」

「…ええ」

顔に血が集まるのを感じたアイリーンはセバスチャンに背を向ける。

「私、あなたのその顔好きですよ」

後ろから耳元で囁かれてアイリーンは駆け出したくなる衝動にかられる。でも、この広くてせまいパーティ会場で走ってしまえば誰かにぶつかってしまう。
衝動の代わりに口いっぱいにケーキを放り込んだ。

「アイリーン、こちらを向いて」

セバスチャンに呼ばれ振り向く。頰にたくさんケーキを溜め込んだままセバスチャンを睨んだ。
その様子を見たセバスチャンはくすくすと笑い、アイリーンの口元に親指を滑らす。拭い取った生クリームを舌でなめとる。その仕草がなんともいえないくらい色っぽい。

ーこのお色気製造マシーンが…!!

「あらもういらしていたのね、お嬢ちゃん」

アイリーンがセバスチャンの差し出したレモネードを飲んでいるときに、横から誰かに話しかけられる。
穏やかな声に呼ばれ横を向くとそこには優しい灰色の毛を団子にくくり、頭には金色に輝く冠がのせられている。ドレスの胸元にはたくさんの色がしている勲章がつけられており、マントを止めているサファイアのボタンが特に輝きを放っていた。手元には金色のステッキが握られており、ステッキの上にも大きなダイヤモンドがあしらわれていた。
アイリーンはハッとしたように背筋を伸ばしてレモネードの入っているグラスをセバスチャンに押し付ける。セバスチャンもようやく誰か分かったのかアイリーンから押し付けられたグラスをテーブルに置く。
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