第4章 いつでも
清々しい朝とは違い、アイリーンはどんよりとした気持ちでいた。
薄いピンクに色とりどりのレースがつき、胸元にはたくさんの花がつけられているモスリンたっぷりのロングドレスを身にまとって自室の化粧台の前に座っていた。
心なしか雲も黒い気がする。
化粧台の引き出しからドレスの色に合わせた薄いピンクの口紅を取り出して王冠モチーフのキャップを開け、少し口紅を出して下唇にあてがう。
右から左へと塗り、上唇も右から左へと塗る。すると色味のなかった唇が一気に少女らしく華やかになった。
しかしまだアイリーンの気分は晴れなかった。
「なんでこんなに気分悪いのかしら」
別に風邪を引いてる訳でもない。昨日の一件が理由なのだろうか。
少しだけ自分の心に素直になってみた。
セバスチャンの恋人役が出来るのは嬉しい。でも昨日、セバスチャンに貴女は私のエサなのだと言われた気がして悲しくなった。セバスチャンの飼い主であることを自分でも分かってながらも悲しんでいる自分がいた。
それはまるで
「恋してるみた「お嬢様、出発のお時間です」
セバスチャンがアイリーンの独り言にかぶせるようにして出発の時間を知らせにきた。
アイリーンは体を弾くようにして驚き、椅子から立ち上がった。
ーこいつは悪魔。恋なんてしたらダメ
「行くわよ」