第3章 従順
「なんでこうなるのよ…」
がっくりとうなだれるアイリーン。その手にはトランプが1枚握られていた。
「いやあ、まさかセバスチャンが勝っちゃうなんてね」
「執事としてお嬢様に手を抜くという行為は無礼に値するかと思いまして」
爽やかな笑顔をセバスチャンは見せるが、瞳は雄弁にしてやったりと言っている。
「何を要求するんだい?」
うなだれたままのアイリーンはつゆ知らずエリが紅茶を啜り、セバスチャンに問いかける。
セバスチャンは顎に指をそえて小首を傾げる。
「そうですね…今は忙しいですしまた後日お伝えさせて頂きます」
丁寧に腰をおり、セバスチャンはそのまま部屋を出て行った。
エリは手を差し伸べてアイリーンを立たせる。
「セバスチャンはどんなことを要求するんだろうね」
「知らないわ。あいつが決めることだもの」
くすくす笑うエリの横顔をチラリと覗きながらアイリーンはスカートのほこりを払う。
「ちょっとエロかったりすることなのかなあ」
「胸糞悪いわ、もう寝る!」
アイリーン荒だたしく足音を立てて部屋を出ていった。