第3章 従順
「やっぱり全然ゆっくり出来なかった…」
アイリーンは裸のままベッドに横たわっていた。その横では床に脱ぎ落とした服を拾い上げて着替えるセバスチャンがいた。
「失礼いたしました」
「お腹はもう大丈夫なの?」
「はい。まだ空腹のままですが少しは満たされました」
「ふうん…」
アイリーンはうつ伏せから仰向けに寝返りをうって手を上へと伸ばした。
「別に私じゃなくて他の女でもよかったんじゃないの?」
なんとなく言ってみた言葉。セバスチャンは最後に燕尾服を着て整える。
「私の飢えを満たせるのは貴女だけですから」
それでは失礼します、と言ってセバスチャンはアイリーンの部屋から出て行く。
「…どういう意味よ…」
自分で言っておきながらセバスチャンが他の女を抱いているのを想像したくなかった。
あの指先が、声が、舌が他の誰かのを触るだなんて見たくない。
胸の奥にチクリとした痛みを感じる。
きっと私はセバスチャンにとってはただの餌にすぎない。
お腹が満たされればそれでいいだけ。
ー少なからず私は…
まぶたがどんどん下へと降りてきてアイリーンは眠った。