第3章 従順
「んんっ…」
こすれるシーツの音。私の上で飢えを埋めようとする悪魔は甘美なまでに私を攻め立ててくる。
「もう…っ…そこばっかり…!」
「ここが弱いと分かりましたので」
ゆっくりと口角をあげて悪魔は笑うと余計に攻め立てる。甘美な波はするすると私の心までを絡めていく。
私は思わずシーツを強く握り、悪魔の手に噛み付く。
「…どうなさいました?」
悪魔も余裕がないのだろう。赤い瞳と牙は出たままだ。
「も…むりい…」
ふるふると力なく首を横に振って噛み付いていた悪魔の手を離す。悪魔の手にはくっきりと私の噛み跡が残っていた。
「私には気持ち良くて仕方がないといった顔に見えますよ」
ふかいふかいあかいいろ。
私を助けたあかいいろ。
私を殺したあかいいろ。
この瞳は私をどうにかしてしまう。
ー離さないで
私は悪魔の手をもう一度噛んだ。