第3章 従順
「全然ゆっくり出来やしない…」
自室のベッドにぐったりとアイリーンは寝転ぶ。
ベッドのシーツの匂いを嗅いでみるといつもセバスチャンが洗ってくれている匂いがしてなんとなくほっとした。
「失礼します」
ノックされる音が聞こえたあとにドアノブがひねられる。
「少しお時間いただけますか?」
ワゴンもなにも持っていないセバスチャンにアイリーンは首を傾けると起き上がってベッドに座る。
「ええ。いいわよ」
「実は最近…飢えがおさまらないのです」
「飢え?」
はい、とセバスチャンは言う。するとその一言をきっかけにセバスチャンは瞳を赤くして急に呼吸を荒くする。
牙も唇から出て来て少しずつセバスチャンの本性が見えていた。
「どうすればいいの、私は」
アイリーンはセバスチャンに駆け寄り、うろたえる。
ーセバスチャンがこんなに苦しそうにしているのを見たことがない。どうすればいいの。
「はあ…はあ…お嬢様」
「きゃっ!」
突然抱えられ、抱えられたかと思いきやベッドに落とされる。
そして仰向けの体制のまま落とされた反動で動けないアイリーンの上にセバスチャンが覆い被さる。
「抱かせてください」
「はあ?!だっ、抱かれるの?いま?」
部屋のカーテンはまだ開いており、太陽が燦々と輝いている。
「今でないと…後にすれば…はあ…貴女の臓物を頂戴することになりかねません」
セバスチャンは手袋を脱ぎ捨てて床に落とすと冷たい指でアイリーンのお腹をなぞる。
臓物を食べられるという恐怖とくすぐったさが入り混じりアイリーンは小刻みにプルプルと震える。
「分かったわよ…」
「ありがとうございます」