第2章 犬
ロンドンを中心に消えていく犬。
自分の愛犬が消え、惑う家族。悲しむ家族。
一方で軍で使われる犬、野良犬なども消えていき、一向に姿を現さない犯人。
そしてある日、郵便として届く箱。妙に思い箱を開けるとそこには殺された愛犬が。
しかし、無事に帰ってくる犬もいるという。
「犯人の目的は一体なんなのかしら…」
アイリーンは自室に閉じこもり、新聞を読み漁っていた。
証拠をつかめずにいる警察はいままさにバッシングの嵐にいるだろう。
「犬だけが姿を消し、そして一部の犬だけが無傷で戻ってくる…なんとも不規則的で掴みにくいですね」
セバスチャンはアイリーンの傍らで掃除を行いながら一緒に推理をしているようだった。
「ただ単に無差別的な犬の誘拐、そして虐殺かと思いきや、無傷で戻ってくる犬もいるって…本当に犯人はなにをしたいの?」
「分かりかねますね。人間の心など簡単に移り変わってしまうものですし、このまま犯人の気が変わるのを待ってみるのもいいかもしれませんね」
「それでは女王の憂いは晴れないわ」
アイリーンは資料をばさりと机の上に落としてぐーっと背伸びをする。
「とりあえず、ロンドンに行ってみないと分からないわね」