第2章 犬
カーテンの隙間から溢れる朝の光がアイリーンの目を覚ます。
体を起こして時計を見ると針はまだ四時を指していた。
ーやっぱり眠れなかった。
そっとカーテンを開けて光を全身に受けるとカラカラカラとワゴンを押す音が聞こえる。
ドアがノックされ、ドアノブが捻られる音がし、セバスチャンがワゴンを押して入ってきた。
「おはようございます。今日はお早い起床なのですね」
「…眠れなかったの」
ベッドの端にアイリーンは座り、セバスチャンが近くで紅茶の準備をする。
「ところで、それは誘われていると解釈してもよろしいのですか?」
カチャン、ティーカップがティー皿に置かれるとセバスチャンが一気に距離を詰めてくる。
セバスチャンの鼻とアイリーンの鼻がつきそうなくらいの距離になり、アイリーンは目をそらす。
そのそらした視線の先には自分の肌の色が丸見えだった。
「いやあああああああ!!!」