第2章 犬
「こんなところに引っ掻いたあとがありますね」
セバスチャンにネグリジェの胸元をはだけさせられて鎖骨にある引っ掻いたあとを見つけられる。
「さっき引っ掻いたのかもね…んっ…」
その傷にセバスチャンはゆっくりと舌を這わす。痛いような気持ちいいような感覚が鎖骨から頭に伝わり、恥ずかしくなる。
執拗に舐めるその舌は下へとおりていき、アイリーンの肌を照らす。
「もうそんなに舐めなくていいから、こっちにして」
アイリーンはセバスチャンの頭を掴み、とんとんと自分の唇を指でさす。
「今日は随分と積極的なのですね」
「うるさい」
セバスチャンは軽く微笑むと身を起こしてアイリーンの唇にキスを落とした。
直に触れるわずかに低い体温を受け止めながら2人は貪るようにして唇を重ねる。徐々に酸欠と興奮でアイリーンの顔は熱を帯びてきて、太ももを擦り合わせる。
アイリーンの眉間に苦しげなシワが出来るのをセバスチャンは見つけるとそっと唇を離す。
「っ…はあ…」
「ふふ、お可愛らしい…これくらいいつも可愛らしかったらいいのですがね」
「ふん、可愛くなくて悪かったわね」
「ええ、でも」
セバスチャンがアイリーンの太ももに手を這わす。するとくすぐりを訴えて体がビクビクと震え、甘ったるい声が漏れそうになる。
「お身体の方は口より雄弁でいらっしゃりますね」
「んっ…やめ…」
ーこのままずっと深い夜に包まれていればいいのに。
そう思うとアイリーンはセバスチャンに身を預けた。