第2章 犬
「ここ…どこ?」
ただ暗闇を進む私。周りを見渡しても暗闇。上も下も右も左も暗闇。
「夢…?」
暗闇を進んでいくといつの間にか地面がぬかるみ始めて足元がとられていく。
ーあなたは弱い。
「だれ?!」
あたりは暗闇だけのはずなのに突然聞こえる声。
私は辺りを見渡すが暗闇しかない。
ーなにも救えやしない。そうでしょう?
聞き覚えのあるような声は私の心をゆっくりと蝕んでいくような気がする。
ただ怖い。
「お…まえ…のせいだ…」
「お父様…?」
「おまえが悪いんだ…ぜんぶ…」
「ひいっ」
すがりつくように私の足に死んだはずのお父様が捕まってくる。
鋭く尖った爪がぷつりぷつりと皮膚に入り込んできて赤い血が暗闇に溶け込む。
「いたいっ、やだ…やだ…」
怖いよ。だれかだれか。私をこの暗闇から出してお願い。誰か。
もう私を1人にしないで。離さないで。
だれか。お願い。助けて