第2章 犬
アイリーンはパラパラと書物をめくっていた。
古臭い匂いにも慣れてきた頃である。何冊もの悪魔に関する書物を読んでいるが、これといったものが出て来ない。
「これも違う…」
めくっていた書物を本棚に戻して、椅子に座りなおす。書斎にある椅子よりもふかふかな椅子に座って足を組む。
なかなか悪魔の正体にはたどり着けない。
確かに存在して人間の心を揺さぶるものほど実態は掴みにくいということなのだろうか。
ーとりあえず、目に見えるところから確認するしかないわね
窓辺から差し込む暖かい光。ちょうど良い温もりがアイリーンを包み込む。
ちらりと時計を見るともう少しで3時だ。アフタヌーンティーを持ってきたセバスチャンがやってくるはず。
もう少しだけでも起きとかなければお菓子はなしになるだろう。
ー犬が消えた話も解決しないといけないし…
大きな口を開けてあくびをするとこんこんと扉が叩かれる音がした。
「アフタヌーンティーをお持ちいたしました」
「ああ…ありがと」
ティーポットから注がれた紅茶がティーカップに注がれてアイリーンに渡される。
一口それを口に含むと独特の渋みが口に広がり眠気が覚める。
「先ほどは失礼しました。お怪我はありませんでしたか?」
「ええ。大丈夫よ」
今日のお菓子のガトーショコラにフォークをさして口に入れる。濃厚なチョコレートの味に頭がクラクラしそうだ。