第2章 犬
「本日はお疲れ様でした」
アイリーンはベッドに横たわり、セバスチャンが上から毛布をかける。
「疲れた…」
「お嬢様の首筋に浮かび上がる契約印にはとても興奮いたしました」
はあ…と艶めいたため息を漏らし、少し潤んだ赤い瞳。今までにないほど艶っぽい表情を見せてセバスチャンがアイリーンの首筋に顔を近付ける。
「ちょっと…息かかってる…」
甘い鼻につくような香りに惑わされ、いつものような気の強い言葉も抵抗することすらできない。
セバスチャンは布団をはがしてアイリーンの上に覆い被さるようにするとゆっくりと舌舐めずりをする。
「嗚呼…きめ細かい肌…細い首…気の強い唇…あなたの全てが私を惑わすのです」
「セバスチャン?ねえ、どうしたのよ、ねえってば…ひゃあっ」
少し冷えた舌がアイリーンの首筋を舐めあげる。そのまま耳たぶに到達した舌は耳たぶを執拗に舐めると唇で優しくはさんだ。
アイリーンは太ももを擦りあわせ、シーツを握りながら脳を支配しようとしている甘い感覚から逃れようとする。
「あなたおかしいわ…っあ、ん…セバスチャン」
セバスチャンはアイリーンの首筋から顔をあげるといつものように微笑んだ。
「お嬢様がどれくらい男に耐性があるのかのテストでございます」
「なっ…!」
アイリーンは首筋を抑えて顔を真っ赤にすると布団を頭までかぶってしまう。
「おやすみなさいませ」
ーアイリーンは私のもの