第11章 Who is it that I need?
セバスチャンはドレッサーを開けて服を選び、ベッドの縁に置いて、私に向き直る。
「本日のご予定はございませんので、ゆっくりお過ごし頂ければと思います」
「了解、何かレイは言っていた?」
私はローファーのリボンを締めるセバスチャンに問いかける。
セバスチャンはリボンを丁寧に締めて、立ち上がり、化粧台の前にあるイスをひいた。
そこに私が座ると、肩に手を置いて、笑った。
「いいえ、何もおっしゃられておりませんでしたよ」
「そうなのね」
ー意外とあっさり諦めてくれたのかしら…?
黒髪にクシを通して、指通りを良くすると、高めの位置で1つにまとめられる。
引き出しを開けて、口紅を取り出して薄いピンク色の唇に赤を塗りつける。
「今日はロゼ・セザンヌについて調べるわ。貴方も私が呼ぶまで自由にしておいて」
「御意」