第11章 Who is it that I need?
そこはイギリスでも有数の博物館であり、昔の恐竜のレプリカや本物の骨などが置かれている。
「そういえば、レイはこういうの好きよね」
「ああ、君と小さい頃にお父様によく連れて来て貰っていたな」
レイはティラノサウルスのレプリカに釘付けになっていた。
大きな牙に血走ったような瞳は再現度が高い。
大きさも申し分なく、今にも動き出しそうだ。
「レイといると懐かしいことばかりね」
とても気持ちのいい心地がする。
私は久しぶりに穏やかな笑みを浮かべた。
「あっちも見てみないか、アイリーン」
不意に手を握られ、レイの方へと導かれる。
ーあったかい
人ってこんなに暖かかったんだ。
私はその手を握り返した。
「見てくれ、この恐竜はな…」
レイがキラキラと瞳を輝かせて、展示物の下にある説明文よりも詳しく説明してくれる。
しかも面白くて、聞いている方も飽きない。
「す、すまない…つい、一生懸命話してしまった」
「いいのよ、とても楽しいから」
その間もずっと手は繋いだままだった。
私はこの温かさに安堵したが、同時に不安でもあった。
胸に残る黒いもやが離れない。
どうしてかは…分からない。