第11章 Who is it that I need?
そう言ってセバスチャンは私とレイ侯爵を馬車に乗せた。
私の目の前にレイ侯爵、そして侯爵の隣にセバスチャンは座った。
「今日は本当に君に会えてよかった」
「ええ、私もですわ」
「昔のように呼び合わないか、レイ、アイリーンと」
レイ侯爵は優しい微笑みを浮かべた。
私は昔の頃の記憶が蘇ったかのように心が暖かい気持ちになり、つられて微笑んだ。
「そうね。私たちらしくないわ」
「君もその口調の方が合ってる」
それから私たちは昔のことを馬車の中で話し続けた。
屋敷の草原で走り回ったこと。犬と追いかけ合いっこをしていて、レイがこけて大泣きしたこと。
私がアフタヌーンティーに出されたスコーンにつけるイチゴジャムを買ってもらったばかりのドレスにこぼして怒られたこと。
時に笑いながら話しているといつのまにか初めの目的地である博物館に着いていた。