第1章 一輪の花
「お嬢様、おはようございます」
「ん〜、あとちょっと…」
ーちょっとで済んだ試しがないのですが
「ダメです。本日の予定もきっちりと詰め込まれておりますのでこのあとの予定に響きます」
「セバスチャンうるさい…私は眠いのよ…」
セバスチャンはもぞもぞと寝返りを繰り返すアイリーンの姿を見てほとほと呆れる。毎朝こうも寝起きが悪くては確かに予定に響くことだってあるのだろう。
「こら、寝ない!さもないと…少し悪戯してしまいますよ?」
低い心地の良い声がアイリーンの耳をくすぐるがそんなものは眠気によってかき消された。
一向に起きる気配のないアイリーンにセバスチャンは、はあ…とため息をつくと前髪をかき上げてお嬢様の上から覆いかぶさるようにしてベッドに手をつく。
「アイリーン」
「んぁ…?」
目をこすりながらアイリーンは顔をあげる。
するとセバスチャンの指が頰に近づいてくる。
「いたたたたた!」
「さあ、起きなさい!」
きゅううっとセバスチャンの指がアイリーンの頰を強くつまんでいた。