第10章 綺麗な白色
「う、あ…ああ…」
血を吸われている青年が指先を震わせて頰を紅潮させている。吸血鬼は満足するほど吸い上げたのか首筋から顔をあげると眉間を苦しげに寄せて血を青年の顔に吐き出した。
「まずい…もう君らは帰りなよ」
「ふん、使えるかと思ったのにな」
金髪の吸血鬼の後ろに新たに現れた灰色の髪の吸血鬼が宙にふわりと浮きながら教会の扉を開ける。
そして一気に流れ出すダムのように人々は外に出て行った。
「やっぱりその女の子からの血が欲しいな」
私はここにいる吸血鬼の数を数えた。
私の服を破いた横の髪の毛を刈り上げている吸血鬼と金髪の吸血鬼、灰色の髪の吸血鬼、メガネをしている吸血鬼…合わせて8体もいる。
全員の視線が私に集められると黒いコートが私の視界を一色にした。
「こちらを羽織ってください。そのような格好ではお寒いでしょう?」
優しい口調だが瞳は真っ赤に燃え上がっているような赤色になっている。
セバスチャンに殴り飛ばされて壁にめり込んだ吸血鬼が怒りを全面的に出してゆっくりと立ち上がる。
「俺さ…うん百年生きてきたけど…こんなに惨めな気持ちになったことないね」
「おや、うん百年ほどなのですか?まだまだ若造ですねえ」
目に見えてしまいそうなくらいの火花が散っている気がする。
「ケビン、あまり建物は壊さないようにとセバスチャンさんは半殺しくらいで構いません」
私の真後ろでマーガレットの声が聞こえる。私が振り返りマーガレットを睨みつけるが微笑みで返される。
セバスチャンが助走をつけてケビンと呼ばれる吸血鬼の方に向かって飛び蹴りを入れようとするのを、ケビンは避ける。
余った足を椅子の背もたれに走らせて2度目の蹴りを回すとケビンの頰にヒットした。
吹っ飛んでいくケビンを後頭部に食らったもう1人の吸血鬼がケビンとともに倒れる。