第10章 綺麗な白色
「セバスチャンさんのお連れの方ですわ…ふふ、さっきあんなにも怒ってらっしゃったのはそういうことですのね」
マーガレットが目を細めて私の顎を細い指でなぞる。
「どうして私の名を?」
「私、好きな人のことは全部知りたいと思うタイプでして…気になって調べてしまいましたわ。もちろん、アイリーンさんのことも調べましたし、セバスチャンさんのことだって調べあげましたわ。悪魔だったのですね」
悪魔、というワードを聞いて辺りがまたさらにめいめいに喚き出す。
「ちょっ、こいつ悪魔なのかよ、じゃあこの女は」
私の服は中央で引き裂かれて、首筋が見えるくらい少し下にずり下ろされる。ぼやりと青白く浮かび上がる契約印を吸血鬼は見つけると舌なめずりをする音が耳元に聞こえてきた。
「まあそうだよなあ、こいつが契約主なわけだ」
私を抱える吸血鬼が私の胸元に手をあてて胸を探しているようだが、どれだけ探してもコルセットの下にしまってある胸には辿り着かない。
すると気持ち悪い感触が消え、後ろの方ですごい物音がすると私は下に落下していく。しかしすぐに誰かに受け止められる。
「触らないでもらえますか。私のものなので」
本性を露わにした悪魔に人々は我先にと立ち上がり、教会を出ようと走る。教会の唯一の出入り口の前に金髪の吸血鬼が現れると近付いてくる人々の足を払ってバタバタとドミノ倒しのように倒していくと首筋に牙を突き立てる。