第10章 綺麗な白色
「この教会だけの生物兵器をご覧に入れましょう。その性能などは後ほどご確認ください。では、マントを」
マントを羽織った人たちが一斉にマントを取り払う。
するとすらっとした身のこなしに彫刻のような美しさをもった顔が現れた。
どこか無機質なものを連想させる雰囲気に私は思わず息を飲む。
こんなものを生物兵器として扱えるのか?
「この吸血鬼たちは一般的な吸血鬼と違い、血を吸えば吸うほど力を増し、その力を利用して自ら武器を作り、さらに攻撃力が増します」
左端にいた吸血鬼がにたりときみ悪く笑うと異様に長い犬歯が見えた。
「これで陛下の話は本当だったというわけね」
「左様でございますね」
マーガレットの退屈な商品の自慢話も聞く気が失せる。私はじっと奥の吸血鬼を見ているとその内の一体と目が合った。
全身を貫かれるような電流が走り、私はセバスチャンの腕を掴もうとしたが遅かった。
「お嬢様!!」
刹那
身が軽くふわりと浮き、ウィッグが取り下げられ長い黒髪が流れ出す。腰を吸血鬼に捕らえられたまま私は吸血鬼とともに宙に浮かんでいる。
「おいおい、マギーさんよお。女、混じってるじゃん」
「ひゃっ!」
首筋を一気にべろりと舐めあげられて私は背筋を震わす。人間の舌よりもつるつるで滑らかな舌だった。
マーガレットはマギーと呼んだ吸血鬼のもとに近寄り私の顔をじっと見つめた。
周りの人々はめいめいに騒ぎ出し、セバスチャンはどうしようかと考え込んでいた。