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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第10章 綺麗な白色


お嬢様がものすごくドスの効いたお声を出されました。
驚きです。
長い間、お嬢様とご一緒させていただきましたが、このようなドスの効いた太い声は聞いたことがございません。
私は後ろを慌てて振り向くと椅子から立ち上がったお嬢様が眉間に深い深いシワを寄せて私を睨んでいます。
なにかいけないことをしたのでしょうか。
男装を求めたのがいけなかったのでしょうか、それとも今までが爆発したのでしょうか。
私が尋ねようと口を開けかける前にお嬢様が口を開けました。

「お前、なにやってんの?」

「お嬢様から方法のご指定はいただきませんでしたので、一番早く聞き出せるものにいたしました」

お嬢様は長いため息をついて私の方に歩み寄ってきました。
そして燕尾服の襟を掴んでそこに顔を埋めて息を吸うと私を突き放しました。
思ったよりも強い力に私の体は後ろに揺れます。

「私の気持ち知らないで!」

お嬢様はそれだけ大声で叫ぶと廊下を走る音がどんどん遠のいていきます。
なるほど…お嬢様の気持ちを知っている私に対しての怒りであったのですね。
どうして他の女を抱いたのかとお怒りになられるのも仕方ないのかもしれません。
私は内ポケットから銀時計をとりだして時間を確認する。
仲直りするにはまだ時間がございますね。

「さて…参りましょうか」
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