第9章 牙
丁寧な所作で私の修道服のボタンを1つずつ外していくエドワードさんの手つきはすごく慣れていました。
こんなにも美しい方なのですから、言い寄ってくる方も少なくないのでしょう。
夕方になり、とろけたオレンジ色の光が部屋に放たれています。
こんな時間にするのはいくらか恥ずかしいですが、そんなことよりも誰かに求められる熱が欲しいのです。
「このマークは?」
エドワードさんが私の腰のマークを指差してきました。
用心するのを忘れていたみたいです。
お兄様には誰にも言うなと言われておりますが、お兄様のことはもう信用できません。
私だけを求めないお兄様。私だけを求めるエドワードさん。
どちらが大切かなんて愚問でした。
「これは黒魔術を使っているときについたものです」
マークを指でなぞられると淡い気持ち良さが頭に入ってきます。
「そうなんですね」
「今夜もこの教会で見せ物をする予定なのですが、あなたも来ますか?」
ガーターベルトを外されて、ストッキングを脱がされています。
時々あたる指がじれったく感じました。
「ではひとりだけ連れていきたい方がいるのですが、構いませんか?」
「女人でなければ構いませんよ、あっ」
ギシ、とベッドが揺れる音がして私は甲高い声を上げてしまいました。
誰かに求められるのはこんなにも気持ちいい。
エドワードさんの指が私の弱いところを的確に攻めてきます。
「こんなに気持ちいいの…んっ、はじめて…」
「今まで満足もなさっていなかったのですね、では今だけは私のことを感じてくださいませ」
あまいあまいなみがずっとわたしをとらえています。