第9章 牙
どうして私だけにしてくださらないんですか…?
私は顔をうつむかせて両手を目元にあてて、しゃくりあげながらまた泣き始めました。
心がハサミで切り刻まれているように痛いのです。冷たい手で心臓を握られているようで、胸が苦しいんです。
お兄様…
「私…お兄様が大好きです…ひっく、だから…お兄様に肌を求められれば…ううっ…応じてきました…なのに、お兄様は…」
エドワードさんは私の横に座ると私の背中を撫でてくださいます。
「求められるのに、他の人にも求める…シスターは自分だけという特別感が欲しかったのですね」
背中を撫でてくださっていた手がするりとリボンを巻くようにして、私の腰に回りました。
驚いて体をビクつかせるとエドワードさんは私の手首を優しく捉えて、涙で濡れた私の指を口に含みました。
「やめてください!エドワードさ」
私は咄嗟に身を後ろに引きましたが、意味がありませんでした。
私の指にエドワードさんの舌が絡みついてきます。
「願っても祈ってもお兄様には届かない想いをいつまでも持っていても、シスターが苦しいだけでしょう?ですから、私がその埋まらない溝を埋めて差し上げましょうか?」
口から指を離すと、エドワードさんの唾液の線が一本走りました。その瞬間に私に甘い痺れが走ったのです。
お兄様以外に体を触られているのに、気持ち悪いと思っているはずなのに。
私が求めていたのは…
「シスター。神はいつあなたをお助けになるんでしょうねえ…私なら今すぐにでもあなたをこの苦しみから解放して差し上げますのに」
私はエドワードさんの方に向き直り、抱きつきました。
私も結局お兄様と一緒なのです。熱がないと生きていけないのです。
「エドワードさん…私だけと言って?」
「ええ…シスターだけですよ」
私が求めていたのはこの言葉でした。
ああ、神さまごめんなさい。
シスター失格です。