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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第9章 牙


「きゃははは」「あははは」

石畳の上を可愛い靴のかかとの音を鳴らしながら走り抜けて行く数人の女の子たち。
どこかからハンドベルの音が聞こえてくる。美しい音色と景色が上手くマッチしている。
私は白い日傘をさして歩いていた。セバスチャンは私の斜め後ろを歩きながら街の様子に気を配っているようだった。
角を曲がると昨夜に馬車の中で見た聖マドペンスド教会の前に立っていた。
暗闇でもわかる純白の外壁に夜だと分からなかった聖母らしきものが微笑んでいるモチーフのステンドガラスもある。
屋根には十字架が掲げられており、雨などで少しくすんでいるようだった。
教会にはたくさんの人が集まるようで、扉に次々と人々が吸い込まれていった。
その人混みの真ん中を通り、真っ白な修道服に金色のロゼリアを光らせた女性がこちらに向かってくる。

「あら。見ないお顔ですわ、初めていらした方ですか?」

甘いバラの香りにシルク糸のようにまろやかな金色の髪をそよ風になびかせてシスターが微笑む。

「ええ、牧師様のお話を聞きに」

「そうでいらしたのですね。私の名前はマーガレット・クリスチャンと申します。さあ、もう少しでお話が始まります。こちらにいらして、可愛らしいお嬢さん」

シスターに導かれて私とセバスチャンは教会の中へと入っていく。
木製のイスがいくつも並びんでいるが、そのイスはほとんど埋まっており、私たちは1番後ろに座った。
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