第9章 牙
「虫刺さ…れ、で…も…」
『さあ、もっと乱れて。アイリーン』
脳裏にセバスチャンの声がよぎった。そして全てを思い出した。
昨日、私はお酒を飲みに飲みまくってぐでぐでに酔っ払った私はセバスチャンと外で…
そしてそのキスマークは私とセバスチャンが屋敷に帰ってきてからもしつこく私がセバスチャンを離さずに服を脱がしてベッドに押し倒し、つけたものだった。
もちろんセバスチャンは全て覚えていた。というよりも1ミリも酔っていないセバスチャンにとってはべろべろに酔っ払った私が面白かっただろう。いつもはこんなことしないのに、とでも思いながらしてたであろう。
恥ずかしさに私は穴があったら入りたいという衝動にかられた。ベッドに水中からあがった魚のようにして倒れこみ、顔を両手で隠し、何度も転がった。
「思い出されましたか?いやあ、昨日のお嬢様はすごかったですねえ」
私が恥ずかしさで悶える様子をセバスチャンは面白がってからかう。
今までの何倍もの力を目にこめてセバスチャンを睨みつけるが、セバスチャンはニヤニヤと笑ったままだった。
「あれくらい普段から素直なら良いのですけれどね」
「うるさい!!はやく消してよそれ!!」
「キスマークですか?せっかく、お嬢様がつけてくださったのに消せませんよ」
「あ〜〜!!忘れなさい!命令!」
セバスチャンが名残惜しいという顔をして全身のキスマークを消した。私はベッドに座ってセバスチャンの選んだ服を着させられて食堂へと向かう。