第8章 変化
セバスチャンが私の手首を掴んで昂ぶるそこに私の手を置かせた。それはひどく熱く、硬かった。
「いやっ…そんなとこ触らせるなんて…変態っ…!」
「その変態を誘惑してきた方も相当な変態と存じ上げますが?」
ひょいと軽く私を持ち上げてテラスの柵に私を乗せると腰に手をあてて落ちないようにする。
「うるさい…」
私はセバスチャンを引き寄せて首に腕を絡めると深く唇を重ねた。
呼吸が苦しくなる手前で唇を離してもう一度重ねる。食べるようにして唇を重ねる。どこもかしこも冷たい悪魔の唇は私に心地いい。
「こんなところでしたら見られるかもしれませんよ?」
私が唇を離した瞬間にセバスチャンが問いかける。有名な伯爵が執事と夜を交わしていることが社交界に明るみになれば、社交界では生きていけなくなるだろう。
「…今じゃないと嫌」
屋敷につく間に酔いが冷めて眠ればまたあの悪夢と声が聞こえてくるかもしれない。酔いが回っている間に甘さを感じていれば悪夢も見なくなるのではないだろうか。
そんな哀れな願いに身をのせられるのは今しかない。
理性が働かないうちに身を任せてしまおう。
「見られても構わないんですね?」
セバスチャンが手袋の指先を噛んで、手袋を外そうとしている。私は靴を脱いでセバスチャンの背中に足を回した。
「良いっていってるでしょ。早くして」
「御意」
手袋を外すと私の太ももに手を這わしてくる。火照った体に冷たい手が這う感触がいつもよりも敏感に感じて体を萎縮させた。
「んっ…」
セバスチャンは私の首筋に舌を滑らして何度も同じところをなぞる。顎の下から鎖骨までをなぞり、私の足を触っていない方の手で私の胸のリボンを解く。