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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第8章 変化


私はセバスチャンから出された白色のカクテルを飲んだ。すると優しい口当たりに口に広がる甘みと酸味。ちらりと顔を覗かせるような苦味もアクセントになって丁度いい。

「これはなに?」

「XYZというカクテルでございます。名前がアルファベットの最後ということからこれ以上のカクテルはなし、つまり究極のカクテルと呼ばれています」

「へえ…おいしい」

「気に入っていただいて何よりです」

セバスチャンが微笑む。私はその表情を見ると心が温まるような安心感が生まれた。

「私のために選んでくれたの?」

「ええ」

セバスチャンが私のためだけに選んでくれた。私の忠実な犬で大好きな人。やっぱり私にはあなただけでいい。

「ちなみに、このカクテルの意味をご存知ですか?」

私は首を横に振った。美味しかったので私はいっきに喉に流し込むと今までなんとか持ちこたえていた酔いが一気に回ってきた。

「“永遠にあなたのもの”ですよ」

ぞくりと背筋が震えた。目の前にいる悪魔の蠱惑的な瞳の揺らめきに私は吸い込まれそうになる。
改めて契約の存在を知らされつつも、私の気持ちには半分だけ答えてくれる。
その半分だけが私を壊すのに。
私はグラスをテラスにあった白のテーブルに置いてセバスチャンに向かって走りだし、勢いよく抱きついた。
胸元に頬ずりをし、背中に手を回す。普段ならこんなことは絶対にしないのだが、酔いに任せてみる。

「ずるいわ。ずるい…」

背中から手を離してセバスチャンの胸元を叩く。私の気持ちをきっとこの悪魔は知っている。なのに…
私はセバスチャンのリボンタイを解いてボタンを1つずつ外していく。

「おや、今夜はずいぶんと性急な…」

「何も考えたくないの。その為のお酒だったのに、あなたのせいよ」

首に私が吸い付く。白い滑らかな肌に唇を這わせてみると冷たい感覚と肌の感触が気持ちよかった。
上目遣いでセバスチャンの顔を見るとまるで小さい子をあやすような目で私を見ていた。

「…余裕ね」

「いえ?お嬢様がここまで積極的なことはございませんでしたから、非常に興奮しておりますよ。ほら…」

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