第8章 変化
ーやっぱり飲みすぎたかしら…
私は全身が火照り、夜風を浴びたくてテラスを探していた。足取りがフラフラとして上手く歩けない。
ようやくテラスを見つけてドアを開けると白い柵にもたれた。
ひんやりとした夜風が火照った体を冷ましていく。私はウイスキーのボトルに残っていた分をモスコミュールが入っていた縦に長いグラスに全部注いで持ってきていた。
夜風に当たりながらウイスキーを飲むとさらに酔いが深くなる。
それでも美味しいウイスキーだから飲まずにはいられないのだ。
テラスからは暗くて何も見えないが庭が一望出来るようであった。
私は柵に前向きにもたれてちびちびとウイスキーを飲んでいる。今日は本当に飲みすぎた。
セバスチャンにワインクーラーというカクテルを渡してからたまたま通りかかったシャンパンを運んでいたウェイターからシャンパンを取り、それを飲んだあと、ケーキを1つ食べて、バーカウンターへ行き、スクリュードライバーを注文して飲んだ。
つまみや水などは一切挟まず、お酒が切れたら別のお酒を頼むというようにお酒を飲んでいた。
頭は気持ちが良い程度にぼうっとしていて夜風に当たるとちょうど良かった。
お酒が弱い私がここまで飲むのは珍しいが、カクテルなどをはさむと割といけてしまう。
そんなこんなで色々考えていたらウイスキーもなくなった。次のお酒を…と思い歩き出したら足に力が入らず前向きに転びそうになる。
すると横から腕が伸びてきて、その腕に優しく抱きとめられた。
「お嬢様、その状態で歩かれると危ないですよ」
「ふぇ…セバスチャン…」
セバスチャンの補助で私はなんとか真っ直ぐ立つとセバスチャンがカクテルを持っているのに気が付いた。
「それは?」
呂律が回り辛くふわふわでおっとりした口調になってしまう。
「これはお嬢様へのお返しのカクテルでございます」