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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第8章 変化


「あたし、分かるのよ。根拠がある訳じゃないけれど乙女のカンが言ってるわ」

セバスチャンがオレンジジュース片手に戻ってくる。
私はモスコミュールの入ったグラスを両手で持ってセバスチャンを上目遣いで見つめる。

「はい、どうぞレディ」

「ありがとう!」

セバスチャンはリジーにオレンジジュースを手渡すと踵を返して広間の奥の方へと向かって行った。
きっと私たちに気を遣ってだ。セバスチャンは興味もない料理を手にとってフォークをさし、口に運ぶという動作を数回繰り返していた。
するとセバスチャンの周りに貴婦人たちが集まってきた。

「今だってお姉様はあの人を見ているわ。なのにつまらないって顔をしてどうしたの?」

小さな手でグラスを持って首をかしげた。素直な瞳とお酒の力に負けた私はグラスをミニテーブルの上に置いてソファに深く腰をかけて天井を見た。

「セバスチャンは私の執事なの。私のもののはずなのにあんなに遠い。私の想いは伝えても無駄って分かってる…」

ウェイターがウイスキーを運んできた。ミニテーブルに置く場所がなく、一瞬うろたえるウェイターを見た私はグラスを持って空間を作る。
そこにウイスキーのボトルと小さなグラスを置いてウェイターは去っていった。
リジーはオレンジジュースをストローですすりあげて飲む。

「子供にはつまらない話よね。ごめんなさい」

「どうして?伝えても無駄だって思うの?」

真剣な表情で私を見据えたリジーに見つめられると自分が弱虫に思えてきた。
グラスの中に入っていた氷が溶けてカランと鳴る。

「セバスチャンは人間に興味なんかないの。愛だの恋だのなんて1番信じていないわ」

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