第8章 変化
知り合いの貴族には挨拶回りを済ませてひと段落つこうと私はセバスチャンにお酒を取りにいかせてどっかりとソファに座った。
2人がけだから横に適当にセバスチャンにでも座らせればいい。
「カクテルのスクリュードライバーでございます。甘くて女性でも飲みやすいのが特徴ですが、お酒ですので飲みすぎにはご注意ください」
そう言ってセバスチャンは私にスクリュードライバーと呼ばれるオレンジ色のカクテルを渡してきた。丸みを帯びたグラスになみなみに注がれたカクテルからはオレンジのいい香りがしてくる。
このカクテルはウォッカとオレンジで作られており、セバスチャンの言う通り甘くて酸味の効いた飲み口は強いのが苦手な女性でもジュースのように飲みやすい。
私はさっそくコップに口をつけて一口飲むと、甘酸っぱいオレンジの味が口に広がった。
「美味しいわね、これ」
一気に半分くらい飲み干して私はぼうっと真っすぐ前を見た。すると奥のテーブルから金髪を青のリボンでツインテールにした女の子が走って来る。上下に揺れる金髪と輝かしく光る緑色の瞳は何とも愛らしい。私はコップを傾けて一気にスクリュードライバーを流し込むと今度はセバスチャンに別のカクテルを取って来るように頼み、席を外させた。
「お姉様のそのヘッドドレスとっても素敵だわ!」
私のヘッドドレスを指差して女の子がきらきらした目をこちらに向けて来る。そして私があっけにとられている間に女の子は私のとなりに座る。
「私、エリザベスっていうのよ。お姉様のお名前は?」