第8章 変化
「お嬢ちゃんも大人っぽくなったわね、こちらに座って」
私は陛下の隣に腰かけた。するとオペラはもう始まっており、美しい楽器の音色がホールに響いていた。
陛下は双眼鏡で舞台のほうを一瞬見るとソファの前に置いてある足が少し曲がった机に双眼鏡を置いた。
舞台には青や赤、黄色や薄黄緑のドレスを着てくるくると踊る女役とそれをエスコートしようとする男役の歌声が重なっていた。
中央でパタパタと慌てるように動き回るのがきっと主人公なのだろう。
今回の演目は「ロミオとジュリエット」だ。
許されない恋を描いたこの物語は主演が最近流行りの女優である、レイチェル・ヌーボを起用しているいうことで、自社の宣伝に使えないかと思い見に来たのだ。
普段から欠かさずケアをしているのだろうと感じさせる金髪が照明に跳ね返ってテラス席でも美しく金のように輝く。
身長はそこまで高くなく、小柄だが存在感は抜群だ。
ー宣伝に使えるかもしれない。
私はじっとレイチェルを見続けた。
「ところでお嬢ちゃん」
「はい」
「お嬢ちゃんにだけ話したいことがあるのだけれど、いいかしら?」
物語は2人がバルコニーで愛を誓い合うシーンまで進んでいた。会えるのに、愛しているのに結ばれない2人。
私は体を陛下の方へと向けた。