第8章 変化
わざとらしく泣き真似までしてみせてセバスチャンも立ち上がる。
「午前には本社へ訪ねるはずだったでしょう。それはどうしたのよ」
「私が代行として訪ねておきました。特に何も変化はございませんでした」
「そう…きゃっ!」
私が今まで走ってきた廊下の方を振り向いて自室へ戻ろうとすると体が浮き上がった。
セバスチャンがドレスを持っていない右手で私のお尻を自分の腕に乗せたのだ。
「急になによ!主人を軽々しく持ち上げないで!」
「裸足で鬼ごっこなされていたのを私がもっと早く気付くべきでしたね。おみ足が汚れてしまわれます」
「〜〜っ!!」
私は下唇を噛み締めてセバスチャンの胸板を叩いた。乾いた良い音が胸板で鳴ったがセバスチャンはなんの顔色も変えずに私に叩かれた瞬間に皮肉っぽい笑みを浮かべただけだった。
「改めて見たらあなた本当に綺麗な顔してる」
白い肌。血色のいい唇。長くて細やかなまつ毛に澄んだ紅茶色の瞳。美形中の美形と言っても構わないくらいの顔に私は引け目を感じてしまう。
「お褒めのお言葉を預かり光栄です。しかし、そう仰られるお嬢様もとても可愛らしく存じ上げますよ?」
寝室について私は丁寧にベッドに降ろされるとセバスチャンは自分の目にリボンをつけた。