第8章 変化
私は目に刺さるような日差しに耐えきれずに起きた。おかしい。いつもならセバスチャンが起こしに来て、私が起きなかったらほっぺたでもつまんで起こしてくるのに。
体を起こすとカーテンはすでに開かれており、空はいつも通りの青色で太陽もほぼ真上に差していた。
「ん?なにかおかしい…」
ベッドの近くにあるミニテーブルに視線を移して、私はその上にある時計を見た。
金色の矢印の短針は12を、長針は1を指していた。
「お昼の…12時…5分…」
何度も時刻を頭の中で繰り返し呟いていると私は弾き出されるようにしてベッドを降りてドアを開け、執務室へと走っていった。
まさかあのバカ。まだ寝てるんじゃないかと思うととてもじゃないがリュシアンナ家の面目丸つぶれな気がした。
私は角を曲がろうとするとなにか固いものに顔面をぶつけてそのまま後ろに尻餅をついた。
また、勢いよく尻餅をついて私は顔を痛さでしかめながら上を向くとキョトンとしたセバスチャンが綺麗な色のドレスを持って私を見下ろしていた。
私が何も言えずに口をパクパクさせているとセバスチャンはしゃがみ込み、首を右に傾けた。
「お一人様で鬼ごっこでございましょうか?」
そんなことをしていた訳ではないのを知っているくせに何とも食えないやつだ。私は立ち上がり、お尻のホコリを払ってセバスチャンから顔を背ける。
「うるさいわね。どうして時間になっても起こさなかったのよ」
「起こそうと思いましたら、お嬢様にいつもよりキツめの蹴りを私の大事な部分に入れられましたので…、これにはさすがの私もこたえました」