第8章 変化
ずっとモヤモヤするのは気持ち悪い。
しかしなにも引っかかる出来事も貴族の名前もない。ただ引っかかりを感じるだけだ。
ロゼ。
ないものを考えていても仕方ない。思い出したくないものなのかもしれない。
でもこの気持ちの悪い感じは…なにか悪いことを予感しているのか。
「セバスチャン」
ティーカップを置き、私はまっすぐに奥の自分の肖像画を見つめた。
セバスチャンに描かせた肖像画。
真っ黒な髪に淀んだように見える瞳。白い肌にすぐに折れそうな腕。
自分だとは分かってはいるが、どうにもこうにも違和感を感じる。
ーあれは私よね
イスから立ち上がり肖像画に背を向けた。後ろから痛いほどの視線を感じた気がした。