第1章 一輪の花
「とりあえず、この火炎放射器は没収です」
バルドの背中からセバスチャンは火炎放射器を奪って自分の背中に背負う。
「あなたは早くこの壁の穴を埋めなさい」
いくつかのレンガをバルドに渡すとセバスチャンはラズベリーパイの中にいれるラズベリーソースを作っていた。
ーラズベリーをぐつぐつと煮込み、砂糖をいれる。ほどよくとろみが出てきたら鍋の火を止め、そしてさっき作ったパイにラズベリーソースをい
「ぎゃあああああああああ」
「この声は…メイリン」
セバスチャンはまた重々しいため息をつくとパイ生地を置いてエプロンを外し、洗濯室へと足を運んだ。
「ゼバズヂャンざああああん、この洗剤おかしいですだよ〜」
メイリンがメイド服のいたるところに泡をつけて洗剤の表記を指差してくる。
「スプーン30杯通りに入れたのにおかしいだよ〜」
「これはスプーン30杯ではなく、スプーン3杯です」
「えっ」
「私は忙しいので後片付けお願いします、あと…」
メイリンがいそいそとセバスチャンから遠ざかるが、その腕をがしっと掴むとセバスチャンが微笑む。
「たしか私はこの仕事を朝から頼んでましたよね?あなたはずっとシーツを洗っていたんですか?」
「うっ…それはですだね…」
「はい早くする」
そう言い残すと厨房へと戻っていった。
帰り際、フィニが暴れん坊伯爵を観ているのが見えたが大人しいので放っておいた。