第8章 変化
「おはよう、アイリーン」
「…なんで朝からあなたがいるのよ…エリ」
私はエリがいるとは知らず、裸で起き上がり、いつも通り手当たり次第に物を投げてまたセバスチャンが片付けているという朝を迎えていた。
朝起きたらセバスチャンはおらず、むしろ涼しげな顔でワゴンを押してきた。
私はクシで髪をとぎ、普段着ドレスを身にまとって私室を出た。
「どこに行くの?」
エリが私の後ろをついて回ってくる。まるで金魚の糞だ。
「今日は公務があるの。まず劉のお店に行って、私の店にも立ち寄って…」
私が指を折りながら仕事の数を数えていると体が急に軽くなった。理由はすぐにわかった。エリが私を持ち上げたからだ。
エリの美しい絵画から出てきたかのような美貌が目の前にある。この美貌だけはいつまでも心臓に悪い。
「じゃあ馬車に行こうか」
「普通にしてればかっこいいのに」
思わず本音が出た。エリは目を丸くすると途端にニヤーとした顔をした。
「そんなの言われたら馬車の中で何するか分かんないな〜」
「なっ!エリ!!」
私を抱きかかえる手に力が入る。私は足をバタバタさせて暴れてみたが、ひょろひょろしてる割には力が強いみたいだった。