第7章 無意味なひと
「ふふ、私はここにおりますよ」
手を顔面に貼り合わせて指の隙間からセバスチャンを見上げるとその瞳は不自然なほどに赤く光っていた。
私を見下ろして私を骨の髄まで透かして見ている。でもそこに慈愛や愛情なんてない。
ただ餌が自分を求める様子を見て興奮でもしているのだろう。それでも構わない。
これは需要と供給だ。
そこに情を感じるだなんて馬鹿げてる。
「さあ、どうして欲しいんですか?まさかここまでとは言わないでしょう?」
「…分かってるんでしょ。言わせないでよ」
悪魔は御意と吐息を含ませた声で言い、リボンタイを解いてベッドの上に膝をついた。
ギシ、と音を立ててベッドのスプリングが沈み、私にまたがると黒髪を撫でた。
「ん…」
セバスチャンがゆっくりと口付けをした。そしてゆっくりと唇を離すと今度は深く貪ってきた。
何度も角度を変えて口付けをし、舌を交わらせると水音が耳元から離れない。
心地よい手が腰をなぞる。気持ちいい。
思わず切なく眉毛を寄せてしまう。
「苦いも酸いも全て甘くとろけさせてしまいましょう…ね」
「あっ、そこ…」
私の体をどろどろの甘い波と冷たい手が這う。
悪魔は口端をやらしく歪めて笑った。
「夜は長い。アイリーンの奥を見せてください…さあ、鳴いて」
名前で呼ばれてさらに感覚が研ぎ澄まされた。ずるい。
私はさらに声をあげた。