第7章 無意味なひと
セバスチャンは私を軽々と持ち上げてお姫様抱っこをすると割れた窓のサンに足をかけた。
「おっおい!私はどうなるんだ!!」
腰まで燃えているオリオットが必死になって私に叫ぶ。
「どうにもならないわ。ここで死ぬの」
その一言を言い終えるとセバスチャンが窓からジャンプして民家の屋根に降り立った。
「戻ったら休めるようウバでもお入れいたしましょう」
「いえ、いいわ。すぐに寝たい」
慣れないことはするものではない。拷問貴族として名のはせた一族ではあるが、私はしたこともなければ見たこともない。
昔の記憶が蘇りそうな気がして今もこわい。
本当に怖くてあんな顔を晒したいのは私かもしれない。
そしていつの日かは今私を抱いて夜空を舞う悪魔にあんな顔を晒すのだろう。