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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第7章 無意味なひと


「いえいえ、せっかくの楽しい夜会です。これからもっと盛り上がるんですから」

そう言うとオリオットは私に背をむけてホール出口の玄関へと歩いていった。
一つの山場を乗り越えて私は大きく息を吐くと壁際の赤いソファに座って足を組んだ。
赤いソファに座ると黒一色のドレスはすごく映える。その分、強烈なまでの存在感を示して私を恐れる誰もが寄り付かなくなる。
ウェイターから冷えた水を受け取り、一口飲んだ。すると熱いくらいになっていた体の熱が少しとれた。

「お嬢様、ですのであれほど一気飲みはおやめなさいと申しましたでしょう」

その様子を見たセバスチャンが周りの貴婦人を追い払ってこちらに歩んでくる。

「そうね…頭が痛くて仕方ない」

「お嬢様は強い方ではないのですから」

セバスチャンが用意してくれたおしぼりを額の上に乗せるとさらに熱がほぐされる。
するとセバスチャンが急にかがんで私の耳元で囁いた。

「華やかな夜会には少々似合わない香りがいたします」

私の顔がこわばる。額のおしぼりを取り、辺りを見渡した。
笑って話をする貴族。料理を食べる肥満の貴族。男女で仲睦まじい様子を見せる貴族。
一般的な華やかな夜会だ。

「どこからするの?」

「あちらの出口が怪しいかと」

「見てくるわ」

「お供いたします」

私はソファから立ち上がり、出口に向かって歩いて行く。色んな色の貴族の横を通り過ぎて出口のドアノブを持ち、手前に引こうとする手をセバスチャンが止めた。

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