• テキストサイズ

【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第7章 無意味なひと


「とてもフルーティーでしょう?この日のために取り寄せたんです」

さっきから絶えない笑みに私は軽蔑の念を覚えた。どうしてそんなにニコニコするんだ。
私は渋い顔をしながらもう一口ワインを飲んだ。
壁際をちらりと見やるとセバスチャンが貴婦人数名に取り囲まれていて胸の奥がムカムカした。

「ところで、婚約者をお探しという話は本当なんですか?」

「ええ」

私は側のテーブルにあったヘーゼルナッツをつまみ、口に放り込んだ。つまらない話だ。
オリオットは顔色を変えずにただ、笑っているだけだった。

「そこに僕を候補に加えていただくことは?」

「別に構わないけれど、私にでなくてあちらの私の執事に通してください」

オリオットはやや驚いた顔をしたがすぐに嬉しそうな顔を作り、私の手のひらにキスを落とした。
私はオリオットの唇が手から離れるとさっと手を引っ込めた。悪寒がする。
本能がこの男はダメだと言っている気がして私は喉にワインを一気に押し込んだ。
世界が横に振られるように私の頭がぐらりときたがどうにかして持ちこたえた。一気飲みはやはりいけない。
しかし目の前がくるくると不規則に回転し始めて気分が悪くなってきた。私はオリオットのスーツにしがみつくと少し落ち着くまで目を閉じた。
オリオットが右手で私の背中をさする。暖かい手の感触は心地よかったが、気持ち悪くもあった。

「もう大丈夫ですわ。ご迷惑をおかけいたしました」

まだ少し気持ち悪いが、私はオリオットから体を離した。
/ 221ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp