第7章 無意味なひと
「そしてお嬢様にはその夜会で婚約者様を探していただきます」
「はあ??」
思わず声を荒げてしまった。婚約者?これ以上面倒なものを増やすのか。
私は起き上がり、セバスチャンの目を見た。
紅茶色の瞳は真っ直ぐに私を見据えていた。どうやら本気のようだ。
「お嬢様も良いお年頃です。もうそろそろ後継のことを考えても婚約者様を決めるのは早くはない、むしろ遅いくらいかと存じあげます」
「婚約者なんていらないわ」
それが私の本心だったと言えば嘘になる。心のどこかで複雑な気持ちが混じっていた。
「何故です?私を納得させてみなさい」
セバスチャンの顔が私の顔と近くなる。理解しがたいと言いたげにしかめられた形良い眉に透き通った肌と美しい目鼻立ちに私は息を飲まされた。
「あなたがいればそれでいいの」
「私との子供を作りたいと?」
意地悪にセバスチャンが笑う。私の顔はさっきのんだホットミルクと同じくらい熱くなり、赤くなった。
その様子を見たセバスチャンはベッドに手をつくと私の髪に手をいれて下に下ろした。
「ちっ、ちがっ…!」
「そうとしか思えませんけどねえ、胸元のボタンが開いているのも誘ってるようにしか見えませ「ホットミルクをちょうだい!」
これ以上喋られるとセバスチャンのペースに乗せられて主人が誰か分からなくなってしまう。
私は強引に話をそらしてセバスチャンからもう一度ホットミルクを受け取る。