第7章 無意味なひと
「それは行き場のない怒りをぶつけたいだけでは?」
嘲笑うセバスチャンに私は後ろを振り向きギロリとした視線を投げつけた。
セバスチャンは真っ直ぐと立ったまま顎を親指と人差し指で掴む仕草を見せて、誘惑するような試すような嗤うような目で私を見据えている。
私はイライラした。何もかもを知った顔をして佇む悪魔に怒鳴り散らしたい気持ちでいっぱいだった。
しかし、どこかセバスチャンの言った言葉を全否定出来ない自分もいて、私は拳を強く握りしめた。
「悲しい過去を負った自分をどこかで埋めわせしたくて、こうして私という駒を使って貴女は自分のぽっかり空いたその隙間に何かで満たしたいだけなんでしょう?」
セバスチャンが私の座っている椅子の背もたれを押して壁に押し付けると私の胸元のリボンをねばっこい手付きで解いた。
リボンが擦れる音だけが部屋を満たした。
私はセバスチャンの手首を掴む。
「そんなことは私が決める」