第6章 なか
「ダメかしら」
「いいえ、すごくステキですよ」
ーそれはもうぐちゃぐちゃに穢したいくらいに。
セバスチャンは優しく笑ってみせるとアイリーンもほころんだ表情をみせた。
アイリーンの手をとり、大広間へとエスコートし終わると扉の前で立ち止まり左ひざをついてこうべを垂れた。
「今までのご無礼お許しください。私は悪魔ですので、人の生まれた日など気にしたことがございませんでした」
「シェリー!」
シェリーがいると思い、悪魔という単語を聞いた途端にアイリーンは辺りを見回したが、シェリーの姿はなかった。
「シェリー…?」
「シェリー様なら先ほどお帰りになられました。続き、よろしいでしょうか?」
セバスチャンに先を言ってもいいかと尋ねられてアイリーンは首を縦に降る。
「ですが、シェリー様に言われて気付きました。お嬢様あっての私なのでございます。それほど大事な存在であるお嬢様のお誕生日を祝わないなど、執事失格でした。どうかお許しください」
束の間の静寂が落ちる。
セバスチャンはずっと下を向いたまま動かず、アイリーンも何も言わないまま少し長い時が過ぎた。
「セバスチャン、立って」
すらりと立ち上がるとアイリーンはセバスチャンの胸元へと飛び込んで腕を背中に回した。
「これからも祝ってくれるなら許したげるわ」
挑戦的な瞳が投げかけられ、セバスチャンはふっと笑う。
「イエス、マイロード」