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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第6章 なか


夜。アイリーンの誕生日に相応しい満月。
白いバラは暗い夜に咲き、美しく月のように輝いている。
誰もが息を飲むような美しい庭園にひとり、色男が立っていた。

「これで完璧でしょう」

色男は踵を返して屋敷に戻ると色男が使えているお嬢様の部屋へと向かっている。
初めて祝う誕生日。
白い手袋をつけた手で二回ノックをすると奥から震えるか細い声が聞こえてきた。
緊張しているのだろうか?なぜ?

「晩餐が整いました。どうぞこちらに…」

いつも通りに晩餐が整ったという報告をしたはずだったが、セバスチャンは目を見張った。
綺麗に整えられた髪。サイドで編み込みがされており、それが団子型にくくられた黒髪に合流して美しいシルバーの髪飾りがつけられていた。
ドレスもセバスチャンが見たことのないデザインのドレスで端っこに立っているシェリーを見るとにこりと微笑んだ。
アイリーンは顔を赤くしてうつむいたままだ。

「お嬢様?どうしてそんな格好をなされているのですか」

「…シェ、シェリーが…誕生日プレゼントってくれたのよ」

顔をあげると今までのアイリーンとは全く違う雰囲気になっていた。
第一印象は美しい女性という印象だった。
赤い紅を引かれた唇にほんのり色付いた頰と長い睫毛。どこをとってもひけをとらず、美しい人形だった。
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